フィールドレポート カジキマグロトローリング ビッグゲームルアーズ
フィールドレポート カジキマグロトローリング ビッグゲームルアーズ
Vol.13 「巨大魚の王国 熱い島 与那国へ part2」 (2006.4.12up)
4日目

今日から2日間、太郎丸さんに乗船の予定。
昨日は随分風が強く吹いた。
今日の波が心配で、早朝太郎丸さんから出航できるかどうかの連絡がきた。

「だいぶ風がおさまってきてるよー、行けるよー」

すぐ港に向かう。
太郎丸さんはもう出航準備が出来ている。
聞けばすぐ近くに住んでるらしい。

太郎丸のたろさんはいつもやさしい笑みを浮かべている。
ほっと安心する笑顔を絶やさない。
こういう人と会うと自分がなさけなく思えてくる。
本土のギスギスした環境が自分の顔にも現れているような気がしてせつない。



「暗いうちに風がおさまってきたから、波もじきに落ち着いてくるよー。」
たろさん、やる気満々だー。

最近はジギングや泳がせのお客さんが多いということだが、
やはりそこは与那国の漁師、カジキを追うのは大好きなんですね。

気持ちが伝わってくる。


港を出る頃に雲の合間から朝日が差してきた。
波は3mほどあるが気持ちの良い朝焼けを見ていると波のあることも忘れそうになる。

与那国島は黒潮が北上している真っ只中なので、
北から風が吹くと、潮と風が逆になり、
三角波でボートが大きく揺れる。
時折、4mもあるうねりがきて周囲が見えなくなる。
南のパヤオまで12ノットぐらいで走る。


パヤオに着くともう何隻かの職漁船が曳き釣りをしていた。
ヨコワ(マグロの子)の切り身でシイラを釣っているそうだ。
なんか変だ。
ヨコワのほうが美味しいはずなのに・・・

与那国のカジキ釣りはライブベイトのトローリングで釣る。
ルアーでトローリングすることもあるが、やはりライブベイトがよく釣れる。

春から夏にかけてはカジキがルアーをよく追うが
夏を過ぎるとだんだんルアーを追わなくなってくる。

ルアーで釣るなら早い時期にいらっしゃい、ということだった。

そうはいわれてもルアーズとしてはルアーを流したいですから、
まずルアートローリングをお願いした。

ショートにスラマーヘッドのリンクス、
ロングにパクラのスプロケット、
センターにホークにスピンバレットのプロトタイプを曳く。

一時間ほど流すがやはり時期が悪いのか、ルアーにはカジキが寄る気配がない。

キャプテンのたろさんも、言葉にはださないがあまり期待していない様子が伺えるので、
早々にライブベイトに切り替えることにする。

郷に入っては郷に従え、だね。



ベイトに切り替える話をするとたろさんの目が輝いてきた。

気合が入ってきたぞ。

さっそくたろさんは潜航板にカツオルアーが2本ついた仕掛けを海に投げた。

ベイトのカツオやヨコワを釣る仕掛けだ。
潜航板がスルスルと沈んでいく。と思ったらすぐに浮いてきた。

入食いだ。

仕掛けをあげると2kgくらいのヨコワがついてきた。

おっ、美味そう、と思っていると、たろさんはヨコワをぽんっと海の中にリリース。

「えーっ、なんでー!?」

「いやー、ちょっと大きいねー・・」

大きければクーラーに入れたいけど・・・。
唖然としてたろさんの手を見ていると、1匹目をリリースして、
たった今沈めた仕掛けをもうあげている。

また、ヨコワだ。

「これも大きいなー」

といって、またヨコワは海の中・・・

内地ならヨコワ大漁と大喜びなのに、ここではクズ同然!
入食いのヨコワに感覚がおかしくなりそう、と思っているとまた喰ってきた。

「チー、シイラだー。あっちいけー、このー!」



たろさんは釣り上げたヨコワの横腹にシイラのハミアトがある、といってまた、リリース。
ベイトにハミアトがあったら、カジキはもう喰わないそうだ。

パヤオのすぐ回りはヨコワも多いが、シイラも多く、釣ったヨコワに食いついてきてしまう。

少しパヤオから離れたところで、手頃な1kg弱のヨコワを釣り上げて、
ライブベイトトローリングを始める。

タコ糸を目通ししてフックを引っ掛けるまで10秒ほど、手馴れたものです。
手返しが早い。
ボートを微速前進させながら、ヨコワを船尾から流す。

数メートルラインを出したと思ったら、また手繰り始めた。
どうしたんだろうと思ってたろさんの顔を覗き込むと、シイラ!という。
エサのヨコワをシイラが追ってくるので、避けてるんですね。

しばらくヨコワを船尾近くに流しているとシイラはどこかに行ってしまった。

さすがに船の真後ろの人の姿が見えるところにヨコワを寄せれば
シイラも多少は遠慮するらしい。

表層1mくらいまではシイラがヨコワを喰ってきてしまうそうだ。
流したヨコワが1m以下に沈むまでは
シイラには気をつけて見ていないとだめだそうです。

フーン、水深1mと2mで随分違うようですね。

南のパヤオの周りをしばらく流すが、カジキの気配がないので、
ヨコワを曳きながら西のパヤオ(浮き漁礁)まで流しながら移動する。

相変わらず波は高い。

時折おおきなうねりがやってきて、立っていると辛い。

漁船タイプのチャーターボートの欠点はアングラーの居場所がないことだ。
それは、たろさんもわかっていて、気を使ってくれる。
本当にやさしい船長だ。
たろさんの後輩がボートを新造するときにはその重要さを一生懸命説明するそうだ。
一つ一つ勉強して与那国をすこしでも良くしていこうという前向きな気持ちが伝わってくる。

午後1時。

西のパヤオを一回りしてまた南のパヤオに戻ってくると、ちょっと海の様子が変わっていた。
鳥が多い。
水面にもじりが見える。
回遊魚の活性があがってきているようだ。

たろさんの目の色が変わってきた。
いい兆候だ。
ときどき曳いているヨコワが水面に上がってくる。

シイラかカジキに追われているようだ。
たろさんは曳いているヨコワを頻繁にチェックして交換する。

そのうち、カツオがあがった。

「これ、いいよー。」


たろさんはカツオをリギングしながらうれしそうに言った。

ヨコワよりカツオやソーダカツオのほうが食いがいいという。カジキも美味しい魚を知っているらしい。

たろさんは、リギングしたカツオを丁寧に流し始めた。

カツオはシイラにも狙われずに、水中に沈んでいった。
「カジキだー!」

たろさんが声を張り上げて、デッキの後ろに陣取り、
ボートのスピードはそのままにして、カツオを曳いているラインを手にとって、手繰り始めた。

20mくらいのところでカツオが浮いてくると、たろさんはラインをしゃくって、
カツオを水面でバシャバシャと泡をかくように操りはじめた。

カジキを誘っているのだ。

「右だっ、右の後ろっ!」

たろさんには水中でカツオを狙って泳いでいるカジキが見えているらしい。

するとカツオのすぐ後ろにカジキの大きな背中がブワーッと浮いてきた。
カジキは大きなビルを振りたてながらそのままカツオをくわえて沈んでいった。

たろさんはカジキに違和感を与えないように少しずつラインを出していく。
そのラインがピッと張った瞬間、沈んでいたカジキは目の前で水面から踊りあがった。

カジキは口にくわえていたカツオをポーンと放り出しながら水面に落ちていった。
大きな水柱と泡を残してカジキは去っていった。

推定180kg、とたろさんは言った。

カジキがカツオを食い込むときにビルにリーダーが触れて、カジキが怒ってジャンプしたという。
カジキのビルは非常に感じやすいらしく、ビルに異物が触れるとカジキは怒るそうだ。

カジキのビルは昆虫の触覚のような感覚器官としての働きもあるのかもしれません。
水音や振動に敏感なのはこのビルという
頭蓋骨に直結した巨大な感覚器官が発達しているからかもしれませんね。

たろさんは気を取り直して、すぐにベイトを交換して曳き始めた。

ヨコワの後方、50mくらいのところをカジキが左舷方向に向かって飛んだ。
まだいる。
活性も悪くない。
南のパヤオの南側300m付近を中心にしつこく流すが、その後ふたたびカジキの姿を見ることはなかった。



5日目

最終日。

午前中もカジキ狙いでヨコワを曳いたが、カジキの気配に出会うことはなかった。

午後になってもカジキの気配はなく、
せっかく来たのだから泳がせ釣を試したいと申し出ると快く引き受けてくれた。

道具を片付けて、餌のムロアジ場に急いだ。
南のパヤオから30分ほどで着いた。
与那国島の真南に位置するところのようだ。

もう1艇、餌釣に来ている船があった。
電動仕掛けでサビキを降ろすと底に着かないうちに糸ふけが出た。
もう喰っている。
仕掛けをあげるとおいしそうな40cmくらいの丸々と太ったムロアジが10本のサビキに8本ついてきた。

2回仕掛けをあげれば充分な餌が取れた。
その餌場から15分ほど移動して、泳がせのポイントに着く。
さっき餌場であった船もいた。
棚は130m、底に着いたら1mか2m底を切る。
と思ったらいきなり竿先が水中に突っ込んだ。

「きたーっ」

電動のスイッチを入れる。
ロッドはSWHの30/50のトローリング用のショートロッドを代用しているが、
穂先が柔らかいので食い込みもいい。

外国製のロッドではこうはいかない。
さすが日本のロッドはすばらしい。

たろさんが、いい竿だね、それでカジキかけたら面白いだろうね。
と感心した顔で竿先を見ている。
数分で大きな魚体が浮いてきた。

13kgほどもあるカンパチだ。

本土なら大騒ぎのサイズだが、ここでは当たり前のサイズらしい。
たろさんが網であげる。

バウのMさんにもなにか来たようだ。

青い背中が水中からあらわれた。
見たことない魚だ。

これも10kgは超えている。
オオマチというらしいが、青ブダイとか、そんな仲間らしい口元だ。
牙のようなすごい歯をしている。

自分の仕掛けも降ろすと、すぐにムロアジが暴れ始めた。

竿先を見ているとズギューンと水中に引き込まれていく。
入食いだ。
また、電動のスイッチを入れる。
これもまたカンパチだ。
12kgくらいだった。
友人にもカンパチがきた。
15kgくらいだった。

たった20分の出来事だった。
しかしもう充分堪能した。

魚影の濃さには驚いた。
ちょんのまに試した泳がせで、
20分で10kg15kgのカンパチが3本、
13kgのオオマチが1本。

あきれるほど魚がいる。

風も出てきたので、あがることにした。


与那国のカジキは例年2月からシーズンが始まる。
3月4月には魚影が濃くなり、9月まで続く。
ルアーを良く追うのは5月頃から8月くらいまでとのこと。

我々が行った10月はシーズンのハザマでカジキもいるけれど多い時期ではないそうだ。
秋11月には300kgを越える大型のカジキが回遊してきて、12月まで続く。

だから1月に釣れるカジキはシーズン終わりのカジキなのか、
シーズン始めのカジキなのかわからないそうだ。

つまり年中カジキはいるらしい。

すごい島ですね、与那国島は。

太古の海そのままが、残っている海でした。
巨大魚も巨大カジキも釣の女神さえウインクしてくれれば誰にでもチャンスのある豊穣の海です。

こんな海がいつまでも残ってくれるとうれしいですね。

それと、島の人たちも、何もないけど豊かな心を持ったおおらかでやさしい人々でした。
帰ってきたばかりは何もなくてつまらない部分もあったと思いましたが、
心の中には山のようにたくさんの思い出が残っています。

あたたかい人の心と大いなる自然に触れた経験は、
いつまでも心の中に深く刻まれて、
忘れることのない思い出になっていくようです。

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